今回の1本はちょっぴり異端な悪魔祓い系作品『ザ・ライト-エクソシストの真実-』、ネタバレとあらすじを含みますので未鑑賞の方はご注意下さい。
「職業」という方向からエクソシストを描くためにグギャー!キシャー!なホラー描写は控えめですが、それよりも「普通に座っているだけのアンソニー・ホプキンス」のほうがよっぽど怖いという…(笑)
ザ・ライト
-エクソシストの真実-
2011年 アメリカ
主なキャスト:
コリン・オドナヒュー
アンソニー・ホプキンス
アリシー・ブラガ
キアラン・ハインズ
トビー・ジョーンズ
ルドガー・ハウアー
マルタ・ガスティーニ
監督:ミカエル・ハフストローム
脚本:マイケル・ペトローニ
ネタバレ無しのあらすじ
葬儀屋の息子として生まれ、神学校へと進学したマイケル・コヴァック(コリン・オドナヒュー)。
しかしそれは信仰心ゆえではなく現実からの逃避であり、彼自身は神という存在にすら疑問を感じていた。
卒業後そのまま信仰の道へ進む事を拒否していたマイケルに対し、マシュー神父(トビー・ジョーンズ)は半ば強制的にエクソシストとなる道を薦める。
しぶしぶ訪れたバチカンで彼は、型破りでありながらも数々の悪魔祓いを経験してきた伝説的エクソシスト、ルーカス神父(アンソニー・ホプキンス)と出会い、信じがたい現象を目の当たりにするのだった…
・・・といった内容の作品。
キャストで戯言
主演…といって良いのかわからない状態ですが、一応主演はコリン・オドナヒュー。
長編映画は本作がデビューとなり、その後ちょろっとドラマや映画に出てはいるものの…知名度は低め。
もはやこっちが主演とも言えるのが、泣く子も黙る怪優アンソニー・ホプキンスですよ。椅子に縛られたまま首だけ動かして相手を追う姿は怖すぎて、座りションベン漏れそうになりますな。
どうしてもハンニバル・レクターのイメージが強い彼ですが、もはや彼の存在がそのまんま「悪魔」みたいなもんですから(笑)
そしてヒロイン的ポジションにアリシー・ブラガ。『映画/アイ・アム・レジェンド』でハリウッドブレイクし、その後ちょこちょこ見かける美人なのですが…個人的には苦手。顔の造りは嫌いじゃないものの、表情と態度がクソ生意気で可愛くないんですよね、この人。
さらに『盛大にコケて人を殺しておきながら、そっちよりも自分のヒザをさすった挙げ句、才能のある生徒をエクソシストにするため奨学金返還をチラつかせて脅迫する神父』にトビー・ジョーンズ。
彼はルックス的に非常にクセがあるのに、幅広いキャラを自然に演じられるのが素晴らしいですなぁ。名脇役として大好きな一人です。
もう一人の名脇役キアラン・ハインズは『大物っぽく教鞭を執っているものの、肝心な時には不在で携帯も留守電にしていて役に立たない神父』の役。彼は相変わらず顔の威圧感が強すぎますな。
ついでに悪魔に憑かれた少女ロザリアを演じるマルタ・ガスティーニの体当たり演技も見応えがありました。美人ですし。
現実をもとにした作品
『これは現実の出来事をもとにした作品である』という事で、登場するマイケルやルーカス神父は実在の人物。
悪魔憑きも悪魔祓いも全て『現実に起こっている』らしいのですが…
ホント申し訳ない。私も『疑う者』なので、これを全て『現実の出来事である』と信じるのは無理でございます。
神と仏の違いもわからず宗教に対して節操のない日本人の中では、信仰というものに関して真摯に向き合っているほうだと思うのですが…こと『悪魔憑き』という現象に関してはねぇ。作中のマイケルと同じような疑問を感じてしまいます。
悪魔、という存在を認識している者にだけ悪魔憑きは起こり、それ以外の地域や宗教観では悪魔憑きという現象は無く(同様の現象を他の名称で呼ぶことはあり)。挙句の果てにルシファーだのバアルだの、人間が勝手に付けた名で括っておいて、それを知る事が大事??
…うーむ。
超常的な現象を否定する気は全くないのですが、それを「悪魔」やら「サタン」やら、自分たちの価値観だけで通用する形に当てはめようとするのがどうかと…。
まぁ良いでしょう。私はキリスト教ではありませんし、幸い悪魔に憑かれた自覚はありませんし。
どうでも良い話ですがタイトルの『ザ・ライト』は「儀式」という意味で、灯りでも右でもないようです。
『職業』としてのエクソシスト
…というわけで、悪魔憑きといった現象が実際にあるのかどうか。いや、そういった現象は実際に報告されていますので、それが果たして『悪魔』によるものなのかどうかは置いといて。
悪魔祓いの大御所『映画/エクソシスト』やその他の悪魔系作品と比べると「いかにも悪魔系ホラーです!」といった演出が非常に薄い本作。首も回りまらなければ緑のゲロも吐かず、関節が逆に曲がって天井にへばりついて移動することも無し。CGを駆使してゲームちっくな悪魔が登場することもありません。
単純に『悪魔系ホラー映画』を目的として鑑賞した方には物足りないような内容ではあります。
…が、本作はそういう作品ではなく。
『人生の仕事として考える、エクソシストという職業』もしくは『エクソシストができるまで』といった、リクルート系悪魔作品なわけです。
調べたところによると「エクソシスト」という職業は決して地位が高いわけではなく、上位の信仰者がやるような仕事ではないそうで。
世の評価も収入も割りに合わないものの、決して無くすわけにはいかない仕事。作中のルーカス神父のような異端向きのクソ仕事らしいです。たしかに数々の悪魔祓いを実践してきた伝説的エクソシストにしては、決して優雅とは言えない暮らしぶりをしているご様子ですし。
そのへんも『リアルなエクソシスト映画』という事なのでしょう。リアルなのだからCGバリバリのデーモンが登場したり、背中から羽が生えて飛んだりはできませんなぁ。赤目のラバも夢でしたし。
個人的・戯言感想
そんな「変なとこでリアルなエクソシスト」を描く本作ですが、個人的にはありがちな悪魔映画よりも遥かにツボり、3回以上鑑賞しています。
もちろんアンソニー・ホプキンスの存在が大きいのですけどね。これがもし『ルーカス神父=トム・ハンクス』だったならばここまで魅力を感じる事はなかったでしょう。いや…それはそれで見てみたい気もしますが(笑)
最終的に神父として生きる道を選んだマイケルですが、エクソシストになった…というわけではないのですかね。「普段はノーマルな神父、しかしいざとなれば悪魔祓いもやっちゃうぜ」的な異端神父だったり…。
なにはともあれ、アンジェリーナから記事と一緒に「また会いたい」などと書かれた手紙が届いたようですが、マイケルはもう神父だから「あんな事やこんな事」はできないんですな、お可哀想に。
せっかくルーカス神父(の中のバアル)が「コイツお前に気があるぜ。良いおっぱいしてるぜ」と教えてくれたというのに…。