これまた古い映画を引っ張り出してみました。ウディ・アレン主演&脚本&監督の「映画/地球は女で回ってる」です。
そのタイトルだけ聞いたならば絶対に観る気など起きないのですが・・・ウディ・アレンの作品ならば期待を裏切る事はないだろう、との思いで選んだ1本です。
結果としては「やはり信じてよかった!」と思える良作でした。
地球は女で回ってる
(原題:Deconstructing Harry)
1997年 アメリカ
主なキャスト:
ウディ・アレン
エリザベス・シュー
カースティ・アレイ
エイミー・アーヴィング
ジュディ・デイヴィス
ボブ・バラバン
マリエル・ヘミングウェイ
ビリー・クリスタル
ロビン・ウィリアムズ
デミ・ムーア
トビー・マグワイア
スタンリー・トゥッチ
監督:ウディ・アレン
脚本:ウディ・アレン
ネタバレ無しのあらすじ
自身の女性遍歴ネタでベストセラー作品を生み出してきた作家ハリー(ウディ・アレン)。
スランプに陥っていた彼だが、愛人に「自分達の関係を暴露した」と乗り込まれたり、元恋人の結婚に嫉妬したりとドタバタ続き。
やがて彼は現実と虚構の区別がつかなくなっていく・・・
・・・といった内容の、気合を入れて観ないと頭がこんがらがりそうな作品。
注)動画は予告編ではなく本編の一部カット版(字幕なし)
キャストで戯言
ウディ・アレンは抜群の安定感で、いつもの彼です(笑)
そしてそれ以外の俳優も豪華すぎる。出演している俳優のほとんどが名俳優と呼べる方ばかりで、主なキャストを書き並べるのが大変でした。
エリザベス・シューはいつ見ても健康的な美人で良いですねぇ。
脇を固める俳優もエイミー・アーヴィングやボブ・バラバンなど、しっかりした演技派を配置しており・・・さらにはチョイ役のような扱いを受ける「ハリーの創造した登場人物」にはデミ・ムーア(大御所)、トビー・マグワイア(若いっ!)、果てはロビン・ウィリアムズ(顔が…)まで。
俳優で映画のすべてが決まるわけではありませんが、やはり名優で固めた映画は厚みの違いを感じます。
今回は詳しく内容に触れるようなネタバレはないよ!!
原題と邦題
なかなかインパクトのあるタイトルの「映画/地球は女で回ってる」ですが、原題は「Deconstructing Harry」直訳すると「ハリーの解体」といったところでしょうか。
これは映画終盤に出てくるセリフというか、アイデアというか、そのへんにかかってきます。
古い作品の邦題って、英語をそのまま直訳した「センスの欠片もないもの」だったりするのですが、この「地球は女で回ってる」はなかなかの邦題だと思います。
ウディ・アレン絶好調!
とにかく冒頭からラストに至るまで、ウディ・アレン節が絶好調のこの作品。ほんと、この人はスケベオヤジだなぁ(笑)
ポンポンとテンポ良く進む作品作りは彼の持ち味ですが、この映画はテンポが少々早めかつトリッキーなので、なんも考えずに観てしまうと「ん?」となってしまいそうです。
現実と虚構を織り交ぜた展開が終始続くので、混乱してしまう方もいるかもしれません。
しっかりと「誰がハリーの作品中の人物で、そのモデルとなっている現実の人物は誰か」を把握して鑑賞できないと面白さが半減してしまいます。名前も現実と虚構で違うので、ややこしいですよ(笑)
現実と虚構の人物一覧
ちょっと「虚構の登場人物」と「そのモデル」を一覧にしてみました。
虚構の人物 | モデルとなった現実の人物 |
ケン (リチャード・ベンジャミン) | 3番目の妻ジェーン(虚構中ではジャネット) の妹、ルーシーと不倫をしているハリーがモデル |
ポール (スタンリー・トゥッチ) | 2番目の妻ジョーンとの結婚時の ハリーがモデル |
ヘレン (デミ・ムーア) | ユダヤ教であるハリーの姉と、 セラピストである2番目の妻ジョーンを 混ぜ合わせてモデルとしている |
ハーヴィー (トビー・マグワイア) | 最初の結婚時のハリーがモデル |
なお現実世界のルーシー(不倫相手・3番目の妻ジェーンの妹)と虚構中のレスリー(不倫相手・3番目の妻ジャネットの妹)は共にジュディ・デイヴィスが演じています。
同じく現実世界でハリーの元恋人フェイ(彼女は虚構には出演しません)を奪った友人、ラリー(ビリー・クリスタル)も、虚構中で「恋人を奪った悪魔」として同じ人物が演じています。
虚構中にはもう一人、ピンボケになってしまった男メル(ロビン・ウィリアムズ)が出てくるのですが、彼のモデルとなっている人物はわかりません。作品終盤でハリーがピンボケになってしまう展開への布石かと思われます。
一緒に鑑賞したカミさんは、この人物の相互関係の把握が大変だったようで…途中からついてこれなくなっていました(笑)
ウディ・アレンの「笑い」
鑑賞時は問題なく理解できていましたが、こうやって書き並べてみるともう何がなにやら・・・。え?誰が誰だって?となってきます(笑)
この「わけわからんよ!」というドタバタ感も、彼の作るコメディ要素の一部なのかもしれません。
もちろんいつものように、ウィットに富んだ不謹慎な笑いも健在です。
終盤、地獄に降りていくエレベーター内のアナウンスは最高でした。
地獄の5丁目:スリ・物乞い・文芸評論家…
地獄の6丁目:極右翼・連続殺人犯・テレビ出演する弁護士…
地獄の7丁目:メディア関係者…(ここで「満員です」となるのがまた…)
地獄の8丁目:逃亡戦犯・テレビ伝道師・全米ライフル協会(NRA)…
こういう社会風刺を入れた、笑うに笑えないジョークを使ってくるところが大好きです。
古臭いが・・・
スケベ大好きオヤジでありながら、自分では露骨にそういうシーンをやらないところがまた可愛いんですよね、彼。
私は恥ずかしながらウディ・アレンという存在を知ったのはかなり遅く、古くからの彼のファンというわけではありません。
現代の映画作品に慣れてしまってからのウディ・アレン作品は、たしかに古さは感じさせるものの、決して悪い意味での「古臭い」ではなく「古き良き映画」を感じさせてくれます。彼の「映画は最高の娯楽だ!」という想いが伝わってきます。
この「映画/地球は女で回ってる」、まだ観ていないが製作年の古さにちょっと抵抗を感じる…という方にもぜひ観ていただきたい1本です。
最後の最後までピンボケになっているロビン・ウィリアムズは必見ですよ。
思わず「やめろー!名俳優ロビン・ウィリアムズをこんな無駄遣いすんなー!」と笑いながら叫びたくなります(笑)