これまた危険な映画を持ってきてしまいました。「映画/エヴォリューション」です。
この映画を観た方の大半は「意味がわからない」となるのですが、その雰囲気の良さから「すごく深い映画だったよね」と言わざるを得ない感が・・・ムカムカくる作品です(笑)
エヴォリューション
2015年 フランス・ベルギー・スペイン
主なキャスト:
マックス・ブラバン
ロクサーヌ・デュラン
ジュリー=マリー・パルマンティエ
監督:ルシール・アザリロヴィック
脚本:ルシール・アザリロヴィック、アランテ・カヴァイテ
ネタバレ無しのあらすじ
少年と女性しかいない謎の孤島で暮らす、絵を描くことが好きな10歳の少年二コラ(マックス・ブラバン)。
その島ではすべての少年が奇妙な医療行為の対象となっており、二コラもその1人として入院する事になる。
徐々に「なにかがおかしい」と感じ始めた二コラは、やがてこの島に隠された秘密を目の当たりにすることになる・・・
・・・といった内容の作品。
・・・というか、あらすじとかそういう話ではない作品。
つまらん映画をつまらんと言えない空気
映画の感想って難しいです。
感じ方は人それぞれ。100人観たら100通りの感想があって然るべきなのですが、小難しく屁理屈をたれる人間のほうが「映画を深く考察している」みたいな雰囲気になりますよね。
たしかに理解力の低い人間、共感力に乏しい人間の映画感想は薄っぺらくなりがちですので・・・私も他の方の感想を読んで「おいおい、何を観てたのよ。なぜこんな簡単な事が理解できないの?」と感じる事がたまにあります。
そしてもちろん「おおお、そう解釈できるのか・・・深いなぁ」と尊敬できるような考察を書く方も多々おります。
ちょっとした謎のある映画作品であれば「人それぞれ」でも問題ないのですが・・この「映画/エヴォリューション」のような作品になってくると、これがまた難しい。
ここまで「意味不明」が強い映画だと、逆にアレコレと過剰に考察して「奥深い映画でした」とか言ったほうがカッコ良いような気がしませんか?(笑)
しかし「意味がわからないが、奥深い映画」と「とにかく意味がわからない映画」は似て非なるモノです。
こちらの脳内でアレコレ想像し、補完することで結論づけられる映画は多くありますが、その「解釈は観る人任せ」の度合いがあまりにも大きすぎる作品は「奥深い映画」ではなくて「無責任な映画」だと思うのです。
どうもそこんトコをはき違えている監督が多い気がします。
理論で理解するのではなく・・・
この作品はもともと「すべてを理屈で解説するための映画」ではありません。
で、結局あの女たちはなんだったの?宇宙人?海底人?少年達の手術の意味は?腹から出てきたアレは何?
そんなふうに「すべてが理屈で解決できないと嫌な人」が観る映画ではありません。残念ながら・・・。
どちらかというと男性よりも女性向けの映画、といった感じでしょうか。
理論で理解するのではなく、感情・感覚で理解する作品です。
そのため、理論で理解するために必要な「セリフ」や「伏線」といったモノは極めて少なく、感情に訴えかけるための「映像」と「音楽」に重点を置いて構成されています。
そのへんはやはり女性監督作品・・・という事なんでしょうね。
しかし・・・
どうですか?ちょっと真面目に書きましたよ?
そのうえであえて、本音を言わせてもらいますが・・・
つまらんよっっ!!(笑)
監督が何を言いたいとか、何を表現したいとか、そんなんどうでも良いと思えるくらいつまらんよっ!
ルシール・アザリロヴィック監督はインタビューで「子供が抱えている不安を描きたかった」とも話しています。
美しい映像と、グロテスクな視覚効果、感傷的な音楽によってさまざまなものを表現している・・・のかもしれませんが、あえて映画で表現する必要があったのでしょうか・・・。あったんでしょうね・・・。
たしかに伝わるモノもありました。考えさせられる奥深いテーマもありました。しかし私にとって「映画」とはこういうものではありません。
もう「低レベル」とか「思慮浅い」とか言われようとも、大きな声で言いたいっ。お隣さんに聞こえるくらいの声で言いたいっ。
ただの監督の独りよがりにしか感じられんよっ!
ここから脱線した話を含むよ!!
オスが子を産む
それもやはり意味のあるストーリーや演出も含まれていますので、1から10まで全て意味がわからん作品でもありません。
ゲスですが、あえて理論で考えてみましょう。ごめんね、監督。
少年達は手術によって「受胎」させられ、それによって彼女達は「繁殖」しているようです。
生まれる胎児がオスなのかメスなのかはわかりませんが、おそらくメスであれば彼女達の一員となるのでしょう。ではオスはどうするのでしょう?生まれてくるのは全てがメスなのでしょうか?
オスは少年になる・・・とも考えられますが、それもどうにも腑に落ちません。
そしてこの作品の舞台ともなっている「海」
実は海には「オスが子供を産む生き物」がいます。皆様ご存知タツノオトシゴです。
タツノオトシゴは、オスの腹部にある育児嚢(いくじのう)と呼ばれる場所にメスが卵を産み付けます。
卵は育児嚢で孵化し、オスの腹から子供たちが生まれてきます。
だからなんだっつー話でもないのですが・・・彼女達が「海の生物」のような吸盤を持って海とともに生きている事と、少年の腹に手術を施す事からふと思い出したネタです。
という事で・・・
個人的に「意味の分からない映画」は大好きですが、残念ながらこの「映画/エヴォリューション」はダメでした。
いやホント、あれこれ考えさせられる部分はあったんですよ。少年が「大人の女性」に対して感じるグロテスクな恐怖や、出産という行為、生物学的な女性という立場、もうアレもコレもメタファー(暗喩)だらけですけど・・・
もう少し歩み寄ってきてくれたなら、素晴らしい映画だったのではないだろうか・・・と感じる作品です。
なんでもかんでも説明したがる「日本映画」も、ご都合展開の「アメリカ映画」も、どうかと思う時がありますが・・・「フランス映画」はいつもフワフワしすぎです(笑)