これまたエグい作品の予感大な『映画/拷問男』で戯言。犯人等のネタバレを含みますが本作は謎解き系というわけではないので…。しかし単なる『グロ描写でGoGo!』な内容でもないところが憎かったり。
拷問男
2012年 オーストラリア
キャスト:
マイケル・トムソン
ビッリ・ベイカー
クリスチャン・ラドフォード
監督:クリス・サン
脚本:クリス・サン
ネタバレ無しのあらすじ
妻と離婚し、最愛の娘ジョージア(ビッリ・ベイカー)を愛しすぎてどうにかなっちゃいそうな男デレク(マイケル・トムソン)。
しかしある夜、別れた妻の家で寝ていた娘が失踪。ほどなくして無残な姿になって発見されてしまう。
まだ6歳の娘を何者かに奪われ失意の底に沈むデレクだったが、とあるきっかけで犯人が判明。一気に彼を狂気の行動へと駆り立てていく…。
・・・といった内容で痛々しい拷問盛沢山の作品。
拷問
拷問、お好きですか?
今の世の中、右を見ても左を見ても変態だらけですので、『する』のが好きという方もいれば『される』のが好きな方もいることでしょう。そして『見る』のが好きという方も。
そういった性癖のある方の欲求を満たすためかなんなのか、なぜか映画には『エゲつない行為を見る』ことを目的としたような作品が多々あり、もはや1つのジャンルといっても良いほど。
この『映画/拷問男』も、そっち系(B級グロバイオレンス)が好きな方ならば食いつかざるを得ないタイトルじゃないですか。こういうの見ながらご飯食べるんでしょ?マニアの方は。
本作も前半こそ甘ったるすぎるほどの『父と娘の愛』を描きまくるものの、折り返し地点を過ぎてからは…
50分間まるまる拷問(笑)
いやー、実にボリューム満点ですな。未だかつてこんなに長時間拷問シーンだけで押す作品を見たことがありませんよわたしゃ。
しかし拷問されるのは中途半端にマッチョな野郎ですので、私のように「エロティックな拷問ならば大歓迎!」というノーマルよりの変態が喜べるようなものではありません。残念。
そして単にグロシーンだけを楽しむような作品でもなかったり・・・。
怒りと虚しさ
邦題がクソなので勘違いされそうですが、本作の原題は『Daddy's Little Girl』
おもいっくそ意訳すれば「パパの小さなお姫様」みたいなもんで、どれだけ父デレクが娘を愛し、かけがえのない存在であったかを表しているわけですな。
なにげに本作は拷問そのものを見る映画ではなく、『愛する人を失った者の、やり場のない怒り』がテーマであり、鬼クソ痛そうな拷問はそれを具現化したもの。さらに言えば『犯罪者に対する刑罰の不条理』を訴えてくる社会性の強い作品だったりするわけです。
ぶっちゃけ犯人も「おまえしかいないだろ」的なところであっさり判明し、どんでん返しもほぼ無し。映画としては実にパンチの弱いストーリーで、ドキドキハラハラを楽しめるようなもんでもありません。
…が、これほど正直に被害者家族の気持ちをぶつけまくった映画も少ないのではないかと。
『愛するものを奪われた報復に犯人を殺す』ってのはよくある話ですが、もしあなたの最愛の人が酷い行いをされた挙句に殺され、その怒りを拳銃でパン!…で済ませられます?
あっさり死ぬなんて許さん!生まれてきたことを後悔するくらい苦しい思いをさせてやるわー!
…というのがぶっちゃけ本音だったりするじゃないですか。だから彼はネチネチと拷問するわけですよ。この「遺族が本当にやりたかった事」をひたすら描き切った作品がどれほどあるか。
しかしそのまま『愛する娘を失った父親の狂気の映画』だけで終わらせることはなく、最終的に彼はトドメをささずに拷問を終える。
連行されていく彼は決して達成感に満ちた表情ではなく、虚しさすら感じさせる姿で、生前と同じく愛に満ちた娘の幻影を見るわけです。
エゲつないまでの拷問シーンで『ヒドいことをしたヤツは、これだけのことをされても当然』という感情を肯定しつつも、『復讐をしたところで満たされるものはない』を同時に描くところがこれまた憎らしいじゃないですか。
結局のところ、遺族は心の痛みに耐えながら生きていくしかないのか…と。
超個人的な戯言感想
あくまでも映画として面白かったか?と問われれば、決して「面白い」とは言えないストーリーではあるものの、『被害者家族が本当はやりたかったタブー』をそのまんまガッツリ描いた点はなかなか。
それなりに考えさせられる作品でございました。
個人的には『ディスクグラインダーで腕切断』が一番見てられなかったですなぁ。私も同じもので太ももをがっつりやっちゃった事があるので。
この手の描写には耐性があるはずなのに、珍しく「ひぃぃぃぃー」と声が出てしまいましたぞ。