AI(人工知能)に恋した男の物語…と聞いた時は「奇抜な設定がウリの、不思議な世界観押し映画だろう」だと思っていた『映画/her 世界でひとつの彼女』ですが・・・
そこに広がっていたのは「儚くもシュール。映画ではあまり描かれないリアルな部分にまで切り込んでくる、えげつない作品(誉め言葉として)」でした。
「良いか」「悪いか」で評価する事ができないような・・なんともモヤモヤした感覚を残す映画です。
『映画/かいじゅうたちのいるところ』の監督・脚本を手掛けたスバイク・ジョーンズ作品だと聞いて、ああ…っぽいなぁ、と納得できました。
her/世界でひとつの彼女
(原題:her)
2013年 アメリカ
主なキャスト:
ホアキン・フェニックス
エイミー・アダムス
ルーニー・マーラ
オリヴィア・ワイルド
クリス・プラット
スカーレット・ヨハンソン(声の出演)
クリステン・ウィグ(声の出演)
監督:スパイク・ジョーンズ
脚本:スパイク・ジョーンズ
ネタバレ無しのあらすじ
近未来のロサンゼルス。
手紙の代筆ライターを生業とするセオドア(ホアキン・フェニックス)は、最新のAI型OSを自身のパソコンにインストールする。
起動させたPCから聞こえてきたのは、自らを「サマンサ」と名乗るセクシーでユーモアに溢れた、まるで生きている人間のような女性の声(スカーレット・ヨハンソン)。
友人のように会話できる彼女とセオドアは意気投合し、次第に「人間とOS」という垣根を越えて親しくなっていく・・・。
・・・といった内容の作品。
キャストで戯言
主演はあのリバー・フェニックスの弟としても有名なホアキン・フェニックス。
正直ルックス的に好きではない俳優なのですが、演技に関しては一目置かざるを得ない俳優です。『映画/ヴィレッジ』での彼が特に好きです。
彼はヴィーガン(厳格なベジタリアン)で、映画の撮影であっても「必要だ」と感じない限り毛皮や革製品の着用を拒むそうで・・・。監督や衣装さんも大変ですな。
その妻役はルーニー・マーラ。
ベタですが『映画/ドラゴンタトゥーの女』リメイク版でド惚れしました。彼女はこの映画の後、2016年から実際にホアキン・フェニックスと交際しているそうですが・・・どちらも変人っぽいだけにどんな生活なのか想像がつきません(笑)
彼女もヴィーガンだそうですので、食生活などで摩擦が生じないのはなによりです。
そしてこの映画で非常に注目(注耳?)されているのがAIサマンサの声、スカーレット・ヨハンソンでしょう。
第八回ローマ映画祭では声だけの出演でありながら「最優秀女優賞」を獲得するなど、非常に賞賛されているようです。
ここからネタバレを含むよ!!
もっとフワフワした作品かと・・・
冒頭でも書きましたが、その設定から「インパクト重視のSFラブもの」みたいな感じを想像していたわけですよ。
もともと恋愛作品は苦手なので、正直気乗りもしませんでしたし。
しかし、序盤で無駄にテンションを上げてくれる部分があって助かりました。あの「エロチャット」のくだりです(笑)
古き時代であれば「テレホンセッ〇ス」、その後パソコンなどを使用した「チャットセ〇クス」となり、ボイスチャットが普及してくれば音声を使って互いにハァハァする・・・時代が変わっても、人間ってヤる事は同じなんですね。
そこで飛び出す「猫の死体で首を絞めて」からのセオドアのキョトーン顔は最高でした。
性癖は人それぞれだから、初めての相手とする時に「う・・・そうくるの!?」とドン引く事って稀にあるよね。。。
ちなみにこの「猫の死体のしっぽで首を絞められてイッてしまう女性」の声はクリステン・ウィグという女優さんが担当しています。『映画/LIFE!』や『映画/ゴーストバスターズ(2016年リブート版)』にも出ている素敵な女性ですよ。彼女がこんな変態プレイで興奮して喘いでいるのを想像すると…私もヤバいです(笑)
リアルな性も描く
とにかくこの映画、性に関する行為に関してグイグイ切り込んでくるんですよ。
フワフワした恋愛モノであれば「愛の結晶」的に美しくボカして表現する部分ですが、人間関係、特に恋愛関係においてはやはり重要な要素でもありますし。
そしてなにせ相手はAIですから。
そこを突き詰めて描こうとした際に、ああいったアプローチになるのも興味深かったです。
なるほどそうきたか・・いや、それでいいのか!?と疑問も感じますが、じゃあAIと生身の人間のセックスってどうすりゃ良いのよ!と聞かれれば、私には生々しくもえげつないアイデアしか出てきません(笑)
そういえば…セオドアが1回だけデートした女性の「もう切羽詰まってる感」も、リアルでちょっと男としては引いちゃいました。さぁヤリましょう!ただし真剣に!結婚を視野に入れてヤリましょう!と言うグイグイ感が…(汗)
この女性が登場した時に「む・・・ラザロエフェクトの人だっ!」とびっくりしましたが、こっちの作品のほうが先だったんですね。彼女(オリヴィア・ワイルド)も特徴的で良い女優さんです。『映画/カウボーイ&エイリアン』にも出演しています。
人工知能との恋
「人ならざる者」との恋愛話は多々ありますし、「人工知能をもったロボット」との恋や友情の話もけっこうあります。
しかし、今作での人工知能はその「姿」すらない。
ここに関して、あれこれと考察やら考えやらを書こうとおもったのですが・・・それはもう膨大な量になってしまいますので割愛します。
そのくらい奥深い要素でした。
物語後半…自分と会話すると同時に、他の人工知能とも非言語によって会話するサマンサに対し、セオドアに芽生える嫉妬にも似た感情も興味深いものがありました。
肉体を持たない存在が抱える、肉体を持っている者同士に対する羨望や嫉妬。それが逆に、肉体を持つ人間としてAIという存在同士に対する感情となると、こうなるのか・・・と。
奇遇にも・・
実はこの映画を鑑賞する数日前、ちょうど「Google home mini」なる商品を買っていたんです。
「OK!Google!!」という恥ずかしい声掛けを我慢さえすれば、それはもうイロイロな事に答えてくれる変な製品です。近所のTUTAYAで¥2000で売っていたので遊び買いしました。
最初はなにをどうして良いのかわからないので普通に調べものしたりしたのですが・・・コイツ、慣れてくるとけっこう気持ち悪いんですよね。検索結果が気に入らないかった時にその旨を伝えれば謝ってくるし、褒めれば喜ぶ。
さすがに映画のようにはいきませんが、会話のような事もできます。
帰宅後には音楽かけてもらって、映画をテレビで再生してもらって、さらには家電まで制御してくれる。こっちは声で命令するだけ。
なんか使っていて怖いなぁと思いました。
そしてこの映画を鑑賞してからはさらに気持ち悪さが増しました(笑)
注)この手の商品はバックドア関係のアレコレがありますので、無駄に手を出さないのが安全です。
ダメだこりゃ!
いやー、今回のこの『映画/her 世界にひとつの彼女』はダメでした。
決して内容がダメなのではなく・・・こういったふうに考察やら感想やらを書こうとすると、もうキリがないんです。原稿用紙100枚分くらいになりそうですし、この自分の中にある感覚の全てを文字で表現するのが難しいです。
しかも全然「バカでくだらない戯言」にならないときたもんだ(笑)
最初に書いた「猫の死体でチャットセッ〇ス!」のあたりのノリで文章を進めたいのですが、そうもいかない作品でした。
もうとにかく「まだ観ていない人は1回観てくれ!」としか言いようのない作品です。
結末もなんとも強引というか…モヤモヤというか…どうにもスッキリしない終わらせられ方をする作品なので「面白いから観てみてね」というオススメ感ではないのですが、もう観てもらう以外にこの感覚を伝える事ができません。
ただし人を選ぶ映画ですので「観たけどなんも感じなかった。つーか面白くなかった」となってしまっても責任は負いかねます。。。
そういえばこの映画、原題は『her』だけですが、邦題お得意の余計なサブタイトルが付けられていますよね。
「世界にひとつの彼女」
これ、最初は「この世界で唯一の存在だキミは!」という意味で捉えていたのですが、あの終わり方を観た後だと非常に考えさせられるサブタイトルでもありました。
世界「で」ひとつの彼女ではなく、世界「に」ひとつの彼女・・・なんですよね。
まぁ邦題つけた人がそこまで考えていたかわかりませんので、私の勝手な先走りかもしれませんけど(笑)