「俺は酒がないと死ぬんだ」とか「私は愛されてないと死んじゃうの」とか、死にもしないクセに死ぬ死ぬ言う人は多いですが…今回の1本は「俺は外に出たら死んでしまうんだっ!」という、引き籠りが言いそうな主張を現実にしたお話、『映画/ラスト・デイズ』です。
アメリカ映画でこの手の設定だとベッタベタの家族愛だったり、無駄にヒーロー気質だったりするもの。しかし本作はスペイン映画だけあってヘンに泥臭い作品となっています。
ラスト・デイズ
2013年 スペイン
主なキャスト:
キム・グティエレス
ホセ・コロナド
マルタ・エトゥラ
レティシア・ドレラ
監督:アレックス・パストール、デヴィッド・パストール
脚本:アレックス・パストール、デヴィッド・パストール
ネタバレ無しのあらすじ
『外に出ると死ぬ』という原因不明の症候群が蔓延した世界。
システムエンジニアとして働くマルク(キム・グティエレス)は会社にいる間にこの病を発症してしまい、他の多くの同僚とともにビルに閉じ込められていた。
やがて地下を掘り進む事でビルから脱出した従業員達は、それぞれがそれぞれの目的に向かって暗い地下鉄路線を進み始める。
マルクも愛する恋人フリア(マルタ・エトゥラ)の元へと向かうのだが、そこには困難な道のりが待っているのだった…。
・・・といった内容の作品。
多くを語らない設定
今回はいつもの『キャストで戯言』はありません。なにせスペイン映画ですので、ハリウッドスターのように日本で有名な俳優は出演しておりませんから…。
私が一人で「フリア役のマルタ・エトゥラは、『映画/スリーピング・タイト』でルイス・トサルに変態行為を受けたあの女性ですよっ!!」とかハイテンションで語ったところで、誰にも通じず白い目で見られるのがオチです。
…という事で、さっそく本編のお話。
開始早々『外に出たら死ぬ』という病(いろいろ表現はありますが、当記事では『病』という表現で統一します)が蔓延しきった世界でのスタート。「何があったのか?」や「なぜそうなった?」など、そういう話は平行して描かれていく形です。
不意に過去の話になったり現在に戻ったりしますが、決してわかりづらいという事もなく。普通に観ていても混乱する要素はないでしょう。ヒゲで見分けもつきますし(笑)
最初に言ってしまうと…この『外に出たら死ぬ』という病について、作品中で詳しい理由付けや論理的な説明はありません。ここは人によって評価が分かれるところでしょう。
こういったSF設定に対しリアルな理屈を求めるか…設定そのものの雰囲気を楽しみたいか…は、個人差がある部分ですので。ちなみに私はどっちもイケるタイプです。巨乳も貧乳もどっちもイケるタイプです。
ここからネタバレを含むけど、くだらない戯言も含むよ!!
ムサくて暗い絵ヅラ
スペイン映画は泥臭い雰囲気が魅力ですが、本作もご多分に漏れない泥臭ささ。
ムサい主人公とムサいオッサンが延々と暗くて汚い道を進む。時折過去の話で華やかな映像になるも、すぐにまた汚いオッサン達の絵ヅラに戻る。
道中に華を添える女性もいませんし、スタイリッシュなアクションもありません。
オッサン二人が時に反目し、時に協力し、やがて固い友情が芽生えていく…といった熱い物語を、地味な映像と地味なアクションで延々見せつけられます。
せっかくの美人キャラ、アンドレア(恋人の友人)と再会できたーと思っても、あっちゅー間に彼女は悲惨な末路。これ、もはやマルクが殺したも同然ですな(笑)
とにかくアメリカ的終末映画とは一線を画す雰囲気ですので、ハラハラドキドキのエンターテイメント的盛り上がり感は薄く、地味に淡々と物語が展開されていきます。このあたりも好き嫌いが分かれそうです。
ツッコミ厳禁
『外に出たら死ぬ』の設定に関してリアル感がないのはまぁ良いのですが、それ以外の部分も不自然さが目に余ると言いますか…ツッコミはじめたらキリがないような展開が目白押し。
ガスボンベでそんなふうに穴開けられる?とか…
不自然な熊のくだりとか…
「あそこは火事で焼け落ちたらしい」とウワサされていた病院は、まさに「今現在燃えている最中」だったりとか…
お腹の中の赤ん坊の写真、あまりにも大きくなりすぎてない!?とか…
…挙げていったら100個書けそうなくらいにツッコミどころ満載。
屁理屈こねれば説明がつく点もあるのですが、それでもやっぱり苦しい展開が多いのがちょっと気になりました。まぁ「揚げ足取り」は映画をつまらなくする要因ですので、そういうモノとして受け入れましょう。うん。
そうやって自分を納得させつつ鑑賞を続けた先・・・『外に出たら死ぬ』という設定をマルクは愛と気合で覆し、『ちょっと耳から血が出たりするけど我慢すれば大丈夫』という力技で愛する人のもとへとたどり着く事ができました。おめでとうっ、なんか腑に落ちないけど!
そして未来へ…
いろいろあったけど、無事に恋人のもとへ着きました。一件落着。
…で終わりにするのかなと思ったのですが、話はそこで終わりません。どんどんその後が続いていき…たった三分ほどでなんと十数年進みます(笑)
やがて二人の子供は少年へと成長し、同じように病の蔓延後に生まれた第二世代『外に出る事ができる少年たち』と共に、世界へと旅立っていくのでした…。
・・・・・・・。
・・・・なんの話?
この終わり方もとても良いとは思うのですが…どうも最後だけ上手いこと綺麗にまとめられてしまった感があり、個人的にはドロ臭いまま終わらせてもらったほうが良かった気が…。
なにはともあれ、えげつないバッドエンドが嫌いな人には好まれそうな終わり方ですし、それなりに見れたかな…という印象の作品でした。決して「面白いっ!」というほどではありませんけど。
外に出たら死ぬ…
もし本当にそんな病が流行ったら、私はどうやって生きていきましょうか…。大好きなお寿司が食べられないじゃないですか…。