死んだ彼女がゾンビになって戻ってきた!…という、あちらこちらで聞いたことのある設定の映画『ライフ・アフター・ベス』でネタバレを含む戯言を。
主演デイン・デハーンが地味に人気のある俳優のようですが、その彼女役オーブリー・プラザの体当たりっぷりがあまりに強烈すぎて…。
ライフ・アフター・ベス
2014年 アメリカ
キャスト:
デイン・デハーン
オーブリー・プラザ
ジョン・C・ライリー
マシュー・グレイ・ギュブラー
モリー・シャノン
アナ・ケンドリック
シェリル・ハインズ
監督:ジェフ・バエナ
脚本:ジェフ・バエナ
ネタバレ無しのあらすじ
不慮の事故で恋人を失ってしまったザック(デイン・デハーン)は、悲しみに暮れながら彼女の思い出に耽っていた。
彼女の父親であるモリー・スローカム(ジョン・C・ライリー)はザックに親身に接してくれるが、ある日急にザックを避けるように。
気になったザックがこっそりスローカム家を覗くと、そこには死んだはずの恋人ベス(オーブリー・プラザ)の姿があった!
・・・といった流れで、笑っていいのかダメなのか迷う展開連発のシュールな作品。
キャストで戯言
主演はデイン・デハーン。
ものすごく有名…というわけではありませんが、なにやら彼には隠れファンが多い様子。私は特に好きでも嫌いでもありません。
そしてある意味こちらが主演、恋人ベス役のオーブリー・プラザがスゴい。
白目が強くて若干ナチュラルに怖い系の顔ではあるのですが、物語が進むにつれての体当たり演技がヤバい。
序盤はいたって普通の状態で「ぜんぜんゾンビっぽくねぇな」と思わせるものの、後半はこれでもかと汚いツラになり、人は喰うわ猫背になるわで喋りもカタコト(笑)挙句の果てに鎖で括り付けられたままガス台背負ってラジカセを首から下げ、二人で楽しくハイキング!!
いやー、やばい。このシーンが本作の最高到達点でした。
まさに彼女の好演(怪演?)あってこそのライフ・アフター・ベス、と思わせるほどの素晴らしいぶっ壊れっぷりですな。
彼ら以外にも通好みな俳優は多数出演しており、ベスの父親モリーを演じるのはジョン・C・ライリー。そして母親役がモリー・シャノン。どちらも多くの映画に出演している名俳優です。
しかし個人的には『映画/68キル』の主演を務めたマシュー・グレイ・ギュブラーが兄役として出演していたことが驚き。さらになんとも変な配置でアナ・ケンドリックを起用していたのが衝撃でした。美人なのになんとももったいない…。
ゾンビ・ガール?
本作の大事な要素でもある、
死んだはずの彼女がゾンビになって帰ってきた
という設定を聞くと、嫌でも『映画/ゾンビ・ガール』が頭に浮かぶ方もいるかと。
死んだ彼女がゾンビとなって帰ってきてしまい、主人公が愛と困惑の狭間で右往左往する…という展開は同じであるものの、ゾンビ・ガールは『主人公・ゾンビ彼女・彼女よりも魅力的な美人』という三角関係に重点を置いた内容。
監督がジョー・ダンテということもあり、一般人にも理解しやすい安心のコメディ作品です(ジョー・ダンテは『映画/グレムリン』シリーズの監督)。新たな恋人役のアレクサンドラ・ダダリオも可愛いくて言うことなし。
…しかし実はこの二作品、どちらも2014年公開だったりするのです。
初公開はライフ・アフター・ベスが2014年1月9日(サンダンス映画祭)で、ゾンビ・ガールは同年9月4日(ヴェネツィア国際映画祭)。劇場公開はライフ・アフター・ベスが2014年8月15日で、ゾンビ・ガールは少々遅れて翌年の6月19日。
撮影時期はライフ・アフター・ベスのほうが開始・終了ともに数ヵ月早いようですが、まぁたまたま同時にカブってしまった…ということでしょうな。
基本設定が似た作品ですが、ライトな映画好きには『映画/ゾンビ・ガール』、コアな映画マニアには『映画/ライフ・アフター・ベス』と、住み分けができているような気も。
コメディです
…ということで内容のお話。
とりあえず設定だけで押すような作品ですので、話の流れは実に単純。
『死んだ彼女がゾンビになって戻ってきた』
↓
『最初は嬉しいが、やはりゾンビなのでいろいろと問題発生』
↓
『さてどうする!?』
…てな流れの中に愛だったりギャグだったりを入れて楽しむコメディ作品。もはや1つのジャンルと言っても過言ではない『ゾンビ・コメディ』ですな。
しかしその「笑い」が少々独特で、見ているこちらが「…今のは笑うとこ?」と戸惑うような場面も多数。
そして最終的には
・なぜ死体がゾンビ化したのか?
・なぜ屋根裏を好むのか?
・なぜ泥を塗りたくるのか?
・なぜ事態は終息したのか?
などに対する明確な答えは無し。相変わらずシュールな空気を残したまま、一応のハッピーエンドという流れに。
これならば中途半端にゾンビパニックとせず、ザックとベスの愛の形に焦点を当てて描いたほうが良かったのでは…とも思いますが、まぁ監督がこうしたかったのであればこれで良いのでしょう。
ちなみにちょいちょい「…あれは何だったの?」と思わせる演出(走り去る人、おかしな配達員、おかしな調理人)等は、全て『ゾンビ化しておかしくなった人だった』ということで良いんですかね?
個人的な戯言感想
さてさて。おなじみRotten Tomatoesでは支持率43%と微妙な評価になっているこの『映画/ライフ・アフター・ベス』ですが、個人的にはもうチョイ上でも良い気がします。とはいえ60点を超えるのは厳しいでしょうなぁ。とにかく理解に苦しむ部分が多すぎるんですもの。
しかし本来、それらの部分は「理解しようとすること」自体が間違いで、頭からっぽにして笑って良い部分だったりするわけです。
「逃げよう!マチュピチュなら安全だ!今から行こう!」
…てな流れも「なんでマチュピチュやねん!!」と即座にツッコミを入れれば良いのに、「どうしてマチュピチュ…何か意味があるのだろうか…伏線とか…」などと考えてしまうから笑えない。
それもこれも、
デイン・デハーンの迫真の演技(表情)
がいけないんですよ。あまりにも悲壮感が漂っているんですもの、この人の顔。(と、頭髪)