注!)当記事はあらすじ・ネタバレ・考察を含みます。未鑑賞の方はご注意下さい。
非常に人気の高いトム・ハーディ、そして実力派女優ノオミ・ラパス、その二人が出ているのだから期待しないわけにはいかない『映画/クライム・ハート』を持ってきてみました。
…とは言え、私は個人的にトム・ハーディはそれほど好きではないんですよね。。。ノオミ・ラパスは好きですけど。
クライム・ヒート
(原題:THE DROP)
2014年 アメリカ
主なキャスト:
トム・ハーディ
ノオミ・ラパス
ジェームズ・ガンドルフィーニ
マティアス・スーナールツ
ジョン・オーティス
アン・ダウド
監督:ミヒャエル・R・ロスカム
脚本:デニス・レヘイン
ネタバレ無しのあらすじ
ニューヨーク、ブルックリン。
地元住民が集まるバーを営んでいるマーヴ(ジェームズ・ガンドルフィーニ)とボブ(トム・ハーディ)。しかしそこは通称『ドロップ・バー』と呼ばれる、チェチェンマフィアの金を預かる仕事を請け負う場所でもあった。
そんなある夜。二人組の強盗がバーに押し入り、ボブたちは売り上げを奪われてしまう。
店を仕切るマフィアから金を取り戻すように脅されるボブとマーヴだが、その裏には思いもよらない陰謀が隠されていた…
・・・といった内容の作品。
キャストで戯言
なにはともあれトム・ハーディ。みんな大好きトム・ハーディです。
私も多くの作品で彼を見かけますが、なんでしょう…骨格がダメというか…(笑)
正直この作品でも「うーん、トム・ハーディか…」とか思っていたのですよ。嫌いではないが、好きでもない感じです。
しかし本作品のトム・ハーディは一味違う。
あれ?トム・ハーディ、今回はこんなキャラなの!?
まだ若いのになんとも悲しいくたびれ感。オドオドしているとまではいきませんが、決して強気でもないし自己主張も薄い。
トム・ハーディ好きならば「彼らしい役柄」と思う方も多いかもしれませんが、私はあまり彼に詳しくないために「これ、トム・ハーディじゃないほうが良かったんじゃ…」とすら感じました(笑)まぁそんな思いは途中で覆されるんですけどね。
私の中では「背が小さいのに顔が大きく、さらにルックスも残念…しかし演技力は素晴らしい」という印象。十分に好きな女優の一人です。
しかし本作品のノオミ・ラパスも一味違う。
あれれ??ノオミ・ラパス、こんなに美人だっけ!?
…なんでしょう、お顔に関してはあまり高評価ではなかったのですが、この映画ではとても美人に見えます。服装なのか…髪型なのか…演技なのか…原因はわかりませんが、全然アリな感じです。
トム・ハーディもノオミ・ラパスも、いつも以上に魅力的。こりゃ素晴らしい。
マーヴ役のジェームズ・ガンドルフィーニにそれほど思い入れはありませんが、彼は本作品の撮影終了後、公開前(2013年)に亡くなっているため、この映画が遺作となっています。
なかなか良いキャラを演じることができる俳優なので残念。…よく知らないけど。
ついでに『映画/コンプライアンス 服従の心理』で店長を演じたオバちゃん、アン・ダウドが出演していたのは衝撃でした(笑)
邦題で戯言
もう映画3本に1本は同じ事を言わなければならないのですが…
『クライム・ヒート』という邦題を付けた人の頭はいったいどうなっているのでしょう
なんなんでしょうね、この「ちゃんと映画見た?中身考えた?」と言いたくなるようなクソセンスの邦題。あっちでもこっちでも散々言われているにも関わらず、いつになっても次から次へと残念なタイトルで送り出されてくる映画たちが不憫でなりません。
この映画が持つ独特のムード。静かに淡々と、しかし奥深く展開する物語。そういった良さを台無しにするタイトルだと感じてしまいます。。。
ここからネタバレを含むよ!!
静かに…しかし力強く…
映画って、ある意味序盤が面白いですよね。ストーリーうんぬんという意味ではなく「この映画がどんな雰囲気を持っているのか」…が、わからない手探りの状態から、徐々に空気を掴んでいく…ってトコが。
この作品も、そのタイトルからてっきり『派手なクライム・サスペンス映画』だと思っていたのですが、始まってみると全然違う。不気味なくらい淡々としたペースで物語が進んでいくじゃありませんか。え?こんな映画なの?
例えて言うならば『ステファニー』という源氏名の女の子を指名してみたら、一重瞼でしもぶくれ、まるで紫式部のような日本人顔だった…みたいな気分です。キミ、名前変えたほうがいいよ、と言いたくなります。
ものすごく盛り上がったり衝撃的だったりするわけでもなく、だからと言って飽きるわけでもなく。
静かに…しかし濃厚に展開されるストーリーは、派手なアクション映画とは違ったボリューム感があります。
それにしても、ちょっとしたアクセント的役割かと思った『犬』の存在が、あそこまでボブという人間を引き立てるとは思いませんでした。
彼の『孤独』という部分、そして抱える『罪』と『贖罪の意識』。実に深い役割でした。そしてボソボソと朴訥であんなルックスのキャラなのに、ものすごく犬を溺愛しているところは萌え要素です(笑)
悪人ではなく…
『自己主張のないヤツだと思わせていたボブが、実は一番ヤバいサイコパス野郎だったね!』…という感想でも良いかと思いますが、私個人としては決して『ヤバいサイコパス野郎』ではなかったです。マジメなんだよね、彼は。
そもそも、なにかにつけてすぐに『サイコパス』という単語を使いたがる人は嫌いです。。。
ボブがどんな人間なのか…を書き始めたら、原稿用紙5枚分になりそうなくらいアツく語ってしまいそうなので割愛しますが、とにかく「他者には理解できない誠実さと実直さ」を持っており、物事をとても客観的に観れる人間だなぁ…と。
まぁちょっと何かが欠落しているのは否定しませんけどね…。
そんな難しい役柄を、トム・ハーディは実に上手に演じてくれました。
これがヘタクソな俳優であれば、前半の不器用な雰囲気に不自然なイモ臭さを加えてみたり、終盤エリックを撃ち殺した後に『いかにもサイコさん』な表情を出してみたり・・・ボブの魅力半減だったかもしれません。
いやーすごいんだね、トムハって。ちょっと見直しました。
濃厚で美味しゅうございました
ベタに盛り上がるような場面があるわけでもなく、ダレるような展開があるわけでもなく。
『最初から最後まで、静かに力強く流れるストーリー』が素晴らしい映画でした。
ヘタなクライムアクション映画なんぞ比べ物にならない、正統派の静かなクライムサスペンスとして、個人的に殿堂入りです。
いつ犬が可哀そうな事になるかとハラハラしましたが、最後まで無事でよかった…。