『容疑者6人・犯人2人』というキャッチコピーがついているからには「貴様、誰が犯人か推理してみろ!」という事なのでしょう。ええ、『映画/パーフェクト・ゲッタウェイ』の話です。衝撃の結末&ネタバレを含みますのでご注意下さい。
この手の作品は初見でアレコレ推理しながら観るのも楽しいですし、結末がわかった上でもう一度観ると「ああー!ここはそういう事だったのか!」という楽しさがあったり、一粒で二度おいしいものですが…本作はちょっとズルくないですか?
パーフェクト・ゲッタウェイ
(原題:A Perfect Getaway)
2009年 アメリカ
主なキャスト:
ミラ・ジョヴォヴィッチ
スティーヴ・ザーン
ティモシー・オリファント
キエレ・サンチェス
クリス・ヘムズワース
マーリー・シェルトン
監督:デヴィット・トゥーヒー
脚本:デヴィット・トゥーヒー
ネタバレ無しのあらすじ
新婚旅行でハワイを訪れたクリフ(スティーヴ・ザーン)とシドニー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)。
二人は美しいビーチを目指してカウアイ島の秘境を徒歩で移動。その道中で二組のカップルと遭遇するのだが、時同じくして『男女二人組の殺人犯が島に潜伏している』との情報が。
あっちが怪しい?いやいや、こっちのカップルも怪しいぞ!?どっちが犯人なんだ!?というドキドキ展開の末に待っている結末は・・・
・・・といった内容の作品。
ここからネタバレを含むよ!!
キャストで戯言
実はこの映画を最初に観た時、私はニック役のティモシー・オリファントをほぼ知らなかったんです。
それゆえ後半の流れは「なんか途中から、よくわからん人が主役になっちゃったよ…」という印象で、結末も「よくわからん人がハッピーエンドで終わっちゃった…」となるわけです(笑)
クリフ役のスティーブ・ザーンの演技に引き込まれていたので、どうも「なんか美味しいトコもっていかれた感」が拭えず。
ところがエンディング後に改めてニックの姿を思い返してみると…あれれ?彼けっこうカッコ良かったんじゃない?
あのちょっとイッちゃってる目と、さほど強面じゃないクセになぜか漂う強者感。「コイツが犯人かも・・」という色眼鏡を外して見てみれば、非常に魅力的だったじゃないですか。
そんなわけで、気づけばティモシー・オリファントの虜ですよ。
その後ひたすらティモシー・オリファントの作品を追う事になるのですが・・・うーむ、彼は使いどころが難しいですね。つまらない役をやらせると全然魅力が出ない。やはり少し頭のおかしい役が似合う気がします。
ティモシー・オリファントと言えば「ヒットマン」!!
・・てな流れになっちゃってるが、アレはティモシーの魅力もクソもないと思うぞ!!
そしてクリス・ヘムズワースも出演しています。今や押しも押されもせぬ雷神様ですが、この頃はまだ無名だったんですねぇ。
それ以外だと…あまり有名ではありませんが、ニックの相方ジーナ役のキエレ・サンチェス。全裸で横たわる彼女の尻は凄まじいまでの神尻でございました。
え?ミラ・ジョボビッチですか?そういえばそんな人も出ていたような気がしますな…。
反則だっ!
冒頭でも触れましたが…この手の「推理型どんでん返し系」の映画は、二度三度と観返す事で「おお、ここはそういう伏線だったのか!」「そっちの意味での発言だったのか!」といった感じに、初見では気づけなかった部分を見つけるのが非常に楽しかったり。
ですので、私は基本的にほとんどの映画を最低2回は観ます。
この「映画/パーフェクト・ゲッタウェイ」も、それはもうペロリと騙してくれる映画ですので2度目の鑑賞も楽しみ・・・と思いきや、結末を知ったうえで観ても「そりゃおかしいだろう!?」と感じる部分が多々あるんですよね・・。
明らかにおかしい部分だらけであれば諦めもつくのですが、非常に上手なミスリードも織り交ぜられているのでクソ映画と切り捨てる事もできず。なんともモヤモヤな気分でございます。
殺人犯の情報が出回っている事を知った時、やたら詳しく聞こうとするのも「なるほど、自分達が犯人だったからか・・」と感じますし、公開された防犯カメラの映像を見た時、ニック達のほうを伺いながら「この映像では断定できない」と話す部分も、初見時は「この映像ではニック達だとは言い切れない」だと思っていましたが、2回目に観ると「この映像では自分達だとはバレない」という意味だったのか…と。
そんな感じに「実に巧妙だなぁ」と感じる伏線は多々あるんですよ。
しかしめちゃくちゃ卑怯だと感じるのが・・・
「本気で殺人犯に怯えている」
…ってトコです。そりゃもうあちこちにあります。
これ、種明かしとしては「そのくらい完全に他人になりきっている」って事なんですよね・・・。
ロールプレイングゲームのように、自分達を完全に一般人だと思い込んで「クリフとシドニーごっこ」をやっているわけです。これはズルいよっ!
そこまでの入り込みっぷりだからこそ、これまでも何人も殺して入れ替わってくることができた・・という事なのでしょうが、映画の演出としては反則ギリギリな気が…。
長いネタバレ回想
終盤に回想映像を使ってアレとかコレとかの伏線を回収してくれるのですが・・・「それ、必要?」と思うような部分も多く、無駄に長い(笑)
「ケイル達のバッグを漁って許可証を探していた時、実は何かを入れちゃってたんだよー」なんてのは、わざわざ映像で見せるほどの事ではない気がします。
他人になりすますため、話し方まで執拗に練習をしていた…ってトコはサイコ感が出ていて良かったですけど。
ここの回想はクリフ達の「実はコイツらが殺人犯だったパート」よりも、ニックの「不器用だけど本気の指輪エピソード」のほうがとても印象的でした。いいですね、こういう関係。ほっこりしちゃうわー。
デジタルビデオカメラ
どーでも良い話ですが・・・物語のキーともなっているデジタルビデオカメラは、おそらくSONYから2008年に発売された『HDR-HC9』です。
記録媒体はミニDVテープとメモリースティック。
彼らは動画が記録されているテープのほうは船上から捨てましたが、メモリースティックが残っていたためにバレてしまいました。しかし…スロットに半差しの状態になっているって…どういうこと?
彼らもハワイについてからアレコレ撮影していましたが、テープをわざわざ買った…とは思えないんですよね。メモリースティックに保存していたなら、いちいち半差しの状態にするわけないですし。
まぁここは「映画上の演出」であってアレコレつっこんじゃいけないところなのでしょう。わざわざ映像から機種名を特定し、記録媒体まで調べるなんて野暮でした。
だって初見時にものすごく気になったんですもの…。
終盤は別映画
犯人が判明してからの終盤は、カメラワークも映像表現もまるで別映画のような雰囲気を織り交ぜてきます。これ、個人的にはけっこう好きでした。
浜辺の映像を止めてみたり、逃げる者・追う者・それを追う者を三分割で表現してみたり、スロー演出を使ったり・・・。
それまでの静かに忍び寄る雰囲気から、躍動感のある映像への変化にはテンション上がります。
さらにはミラ・ジョヴォヴィッチ VS キエレ・サンチェスの激しいキャットファイトまで披露してくれますから。そっち系の性癖がある方は興奮モノでしょう。泥にまみれてやってくれたりしたらさらに最高でした(笑)
トドメで放つ「ジーナキック!」もしっかり腰が回っていて素晴らしい。
話の展開を素直に受け入れられるならば、なかなかのラストだったと思います。
ただし・・・・ヘリでのシドニーのアレはちょっと嫌でしたなぁ。
たとえクリフと共にに殺人を繰り返していた理由が、自分の心の弱さからの依存だったとしても…そりゃ自業自得でしょう。他人を殺して入れ替わり、キャッキャとハワイリゾートを楽しんでいたクセに「最後はまるで被害者面」って、どうなんでしょう。
ぜひコイツにもジーナキックを喰らわせて欲しかったなぁ…と。