なぜかタイトルに「トビー・マグワイア」が入っている事が多い『映画/スパイラル~危険な関係~』、原題は「The Details」なのですが珍しくアリな邦題ではないかと。ネタバレ含みますので未鑑賞の方はご注意下さい。
スパイラル~危険な関係~
(原題:The Details)
2011年 アメリカ
主なキャスト:
トビー・マグワイア
エリザベス・バンクス
ローラ・リニー
レイ・リオッタ
ケリー・ワシントン
デニス・ヘイスバート
監督:ヤコヴ・アーロン・エステス
脚本:ヤコヴ・アーロン・エステス
ネタバレ無しのあらすじ
結婚10年目を迎えたジェフ(トビー・マグワイア)とリーニー(エリザベス・バンクス)。
部屋の増築や庭の改修を計画するも、上手くいかずにアライグマ。
隣人のライラ(ローラ・リニー)はちょっと頭がアレなご様子。
夜の夫婦生活も上手くいかず、ついに友人の妻レベッカ(ケリー・ワシントン)と一線を越えてしまい…
・・・といった展開から、あれよあれよという間にドツボにハマる男の物語。
キャストで戯言
主演は蜘蛛男として有名らしいトビー・マグワイア。らしい、というのは私が一切そちらを観たことがないため(笑)
それよりも『映画/マイ・ブラザー』で心的外傷を受けた兵士を演ずる彼の姿に、まるで自分自身を見ているような感覚を覚え…泣きながら嘔吐してしまい、しばらく会うことを避けておりました。
本作も追い詰められる系なのでドキドキでしたが、コメディ色が強い作りで一安心。
彼以外にも個人的にツボる俳優が多数出演しており、登場人物を見ているだけで眼福ですよ。
相変わらず目が怖いレイ・リオッタは、そこにいるだけでマフィア臭(もしくは異星人臭)がプンプン。しかし本作では悪人ではなく筋の通ったイイ男なのね。
良き友人であり、終盤ではトビー以上にキツい状況になってしまうバスケおじさんはデニス・ヘイスバート。彼、『映画/メジャーリーグ』シリーズでロッカーに怪しい祭壇を作っていた人なんですね。歳とったなぁ。
奥さん役のエリザベス・バンクスは、この後に『映画/ハンガー・ゲーム』でバカみたいなオシャレに目覚めるわけですな(笑)
転がり落ちるブラックコメディ
どこぞのクライム・サスペンスのようなパッケージなのに、鑑賞してみると予想外に軽快な滑り出しで始まる本作。
しかもジャンルは「コメディ」となっていたり(笑)
しかしコメディはコメディでも「はははは、バカだなぁ」と無邪気に笑えるのは序盤のみ。後はコメディと呼ぶことすらためらうようなブラックかつシニカルな笑いで全然シャレにならんのですよ。ラストに至ってはもう全く笑えない。
さらに映画の内容そのままとまではいかなくとも、わりと「あー、たしかに人生ってこんな感じだよな…」と思ってしまうのも怖いところ。
インパクト抜群の隣人ライラに関しても実際いますよね、こういう人。「いやいや、いねぇよこんなヤツ!」ですって?いますよ!私の人生で1人、めちゃくちゃ彼女に精神構造と言動が酷似している女性がいましたよ。あまり思い出したくない記憶ですけど…。
良かれと思ってとった行動(隣人への花・庭の改修・腎臓の提供・etc)が不幸を呼び、そこに混じった出来心と嘘がさらなる不幸へと繋がる。まさに負のスパイラル。原題の『The Details』(細部・細かい事柄)も秀逸ですが、珍しく悪くない邦題ですな。「危険な関係」のサブタイトルは余計だった気もしますけど(笑)
ここからネタバレを含むよ!!
ラストは…
途中までの展開は「やっちまったなぁ、ジェフ!」と、同じような失敗経験のある同性として笑える部分もあるのですが、隣人の妊娠をリンカーンに相談するあたりからは全然笑えず。
追い込まれて誰かに話したかったのはわかりますが、それを彼に言う?彼の性格を考えたら絶対に話しちゃいけない人でしょうにっ。
あれだけ信仰心の厚い彼ですよ。どれほど葛藤し、どれだけの覚悟であの行動を決意したか。
ジェフの好意によって新たな人生を得、腎臓まで提供してもらい、やっと感謝と幸せに満ちた人生が延長されたばかりだというのに…。
『自分を救ってくれた友人のため、自分は地獄に堕ちてでも窮地を救ってやらねば』という覚悟で行動したであろうリンカーンなのに、最後に二人、ベッドで語る内容はろくに彼のことを考えていないような自分達目線の内容。
彼が捕まったら子供たちが不幸になる。うちの子も不幸になる。下手すりゃあなたも捕まる。この罪悪感は一生背負おうのかしら、もしかしたら忘れたりするのかしら…。
…って、一番罪悪感背負ってるのはリンカーンだろうがっ!
ホント、そういうとこなのよ。あんたらは。
橋の上でピーターがジェフに怒鳴った言葉。まさにその通り。
ジェフはそのまんま自業自得。奥さんもあの性格では自業自得。隣人ライラもある意味自業自得。ピーターは奥さんを寝取られましたが、1年以上レス夫婦だったというのは反省するべき点があったかもしれない。しかし…リンカーンは悪くない。
いやいや、確かにどんな理由があれ殺人は悪い事なんですけどね。
病を抱えながらも家族を大事にし、救ってくれた友人に感謝し、恩に報いるために残酷な覚悟をした彼こそ、最も運命に翻弄された被害者のような気がしてなりませぬ…。
個人的な戯言感想
…と、いうわけで。
少々重っ苦しい話になってしまいましたが…リンカーンの件だけ目をつぶれば、ブラックユーモアのコメディとしてなかなか面白い作品だったのではないかと。
みんな隣人ライラのことを「こえー!このオバサンやべー!」と感じるかと思いますが、実は私個人的にはけっこう好きなタイプなんですよね、こういう人。一周回った変人、良いじゃないですか。笑うとすごく可愛らしいですし。
チーズとサラミがどうのこうの言っているクソ生意気な奥さんなんかより、彼女と暮らすほうがよほど人生が面白くなる気がするのですが…。まぁかなり疲れるでしょうけど(汗)
そういえばこの「チーズとサラミを持ってくる浮気相手」、プレートを持っている手しか登場しないのにキャストがクレジットされているのには驚き。James Krukという方だそうです。
『James Kruk:Twitter』
もしかしたら作中のどこかにいたのでしょうか…。