完全に騙されました。まさかそんな話だとは…の『映画/運命のボタン』、ネタバレ&あらすじと作中の謎要素に触れていますが、なにせ意味不明な展開目白押しの作品ですので…。
運命のボタン
(原題:The Box)
2009年 アメリカ
主なキャスト:
キャメロン・ディアス
ジェームズ・マースデン
フランク・ランジェラ
ホームズ・オズボーン
セリア・ウェストン
ギリアン・ジェイコブス
ジェームズ・レブホーン
サム・オズ・ストーン
イアン・カーン
監督:リチャード・ケリー
脚本:リチャード・ケリー
原作はリチャード・マシスンの小説『運命のボタン』
ネタバレ無しのあらすじ
1976年12月 ヴァージニア州
NASAの研究施設に勤務するアーサー(ジェームズ・マースデン)とその妻で教師のノーマ(キャメロン・ディアス)は、一人息子のウォルター(サム・オズ・ストーン)と共に慎ましくも幸せな暮らしを送っていた。
そこに届いた送り主不明の小さな荷物。
開けてみると中にはボタンの付いた装置と「スチュワードが午後五時に伺います」とだけ書かれたメッセージカードが。
そのメッセージ通りにアーリントン・スチュワード(フランク・ランジェラ)がノーマ宅を訪れ、こう告げる。
「このボタンを押せば2つの事が起きます。まず1つは、どこかであなたの知らない誰かが死にます。もう1つは、あなたは100万ドルを手に入れます」
まるで現実味のない内容に困惑するノーマ。果たして彼女はボタンを押してしまうのか…。
・・・といった内容で滑り出すものの、途中から変な方向に話が曲がり始め、最後はあさっての方向へと飛び去っていく作品。
キャストで戯言
主演はもう説明無用。チャーリーズがエンジェルしている有名女優、キャメロン・ディアスです。
ところが私はチャーリーズでエンジェルしたことがないのでそっちのイメージは全くありません。
そして旦那さんは目からビームをぶっ放すサイクロップス、ジェームズ・マースデン。
ところが私は目からビームをぶっ放す姿を見たことがないので、これもまたイメージが沸かず。
そんなわけで「みんな知っているけど、私は知らない二人」がメインのお話ですが、その周りには私もよく知った顔が多数いて安心。特にフランク・ランジェラがお好きです。
しかしこの人も変な役が似合いますなぁ。個人的には『映画/ロリータ』の変態的な役柄がドハマりかと。
予想外にそっち系
最近の映画は予告編やパッケージなどで「そこまで見せたら面白くないだろ」というところまで余計にバラしてしまい、観る前から余計な予備知識が入ってしまってショボボーンな事が多いのですが…本作はまるで真逆。
だって見て下さいよ、このパッケージと予告編じゃ『不思議な設定で描く心理スリラー』のような映画だと思ってしまうじゃないですか。
ボタンを押すの?押さないの?え、押したらどうなっちゃうの!?…という流れで人間の心理をえぐる、コンパクトでB級チックな映画っぽいのに、いざ始まってみると早々に「こりゃ違う感」がプンプン。
冒頭のテロップで「火星がうんぬん…」と流れたとこから変な感じはしたんですよ。「え?火星?あれれ…間違って違う映画を再生しちゃったかな?」と再確認したくらいです。
しかし再生しているのは「運命のボタン」で間違っていない。そう、まさかの『SF要素ぶっこみ系・ワンダー要素満載の困惑ミステリー』でした。。。
ここからネタバレを含むよ!!
数多の謎をまとめて戯言
中盤までは比較的「普通の」ミステリー。こちらの前予想通りに「ボタンを押すの?押さないの?押したらどうなるの?」のドキドキを楽しむことになるわけです。
ちょいちょい意味不明な要素が絡むも、それもまだ「これはきっと後から意味を成すに違いない…」と信じて進むことが可能。しかしそれも中盤まで。
肝心の『ノーマがボタン押しちゃった!』から始まる、ちょっと何言ってるのかわからない展開の連続は…もうどうすりゃ良いのやら。
監督はあの有名な『映画/ドニー・ダーコ』を世に送り出したリチャード・ケリーですので彼らしいといえば彼らしいのですが、なんとも文章のネタにしづらい内容で困ります…。
とりあえず『アレはなんだったの?アレの意味は?』という部分を項目ごとに解釈・解説してみたいと思いますが、まるで見当違いの可能性もあります。あくまでも個人の解釈です、ということでご容赦下さい。
で、彼らは何?
やたらと『火星』と出てくるので、火星人もしくは火星人に寄生された人間なのか…と思ってしまいますが、どうやら明確に『火星人』というわけではないようで。いや、火星人かもしれませんけど(笑)
そこは明確に「コレ!」という答えがないと思うのですよ。
スチュワードは稲妻に打たれたと同時に「高次の存在」の意思を遂行する人間となり、人間に「どう選択するか」を試す事で選別している様子。
この「高次の存在」ってのが異星人なのか、それを超越した生命体なのか、はたまた神なのか…。
物語の中でも『高度に発達した技術は、魔術と見分けがつかない』という一文がキモとなっていますので、人間の目から見りゃ「科学で説明できない神のような話」でも、それは我々が理解できないほどに発達した「技術」なのでしょう。やはり遥かに進歩した生命体ではないかと私は思います。
ですのでやっぱり火星かもしれませんし、知らない惑星かもしれません。全くの白紙状態ではイメージが湧きづらいので、「火星」をキーワードとして「未知の存在」を表現しているのでは…と。
ボタンを押すと誰が死ぬ?
ノーマがボタンを押した時、その前にボタンを押した『ジェフリー・カーンズの妻』がジェフリーに心臓を撃たれて死亡。そしてアーサーがノーマを殺すのは、次に「装置」が届いた夫婦がボタンを押したのとほぼ同時。
どうやらボタンを押した場合に死ぬのは『その前にボタンを押した人』(しかもほぼリアルタイムで)となるようです。
ボタン押すのと殺すのが同時なんてありえないだろ!そんな都合の良い話あるか!…と言いたくなりますが、そこは『高度に発達した技術は、魔術と見分けがつかない』ですから。
高次の存在から見りゃ我々なんてウホウホ言ってる原始人も同然、その頭や科学や理屈で判断しても理解できないのは当たり前。そういうものと受け入れるしかないのです。
私が戦国時代にタイムスリップして、スマホで写真撮って画面を見せりゃ「奇っ怪な!こんなことありえぬ!」と言われるのと同じですな。そしておそらく不気味がられて打首ですな。
ちなみに『じゃあ押さなかったらどうなる?』に関して、物語では描かれていないので断言はできませんが…私としては「押さなかった人は何もなし」かと。
その次の人が押したとしても、死ぬのは「それ以前に最後にボタンを押した人」という事ではないかと思われます。たぶん。
さらに言ってしまえば『じゃあじゃあ、もし妻は殺さず、息子の目と耳がヤラれたままで100万ドルちょーだい!』を選択したら…となると、もう完全に憶測にしかならないので・・・どうしても気になる方はご近所のそれっぽい人にでも聞いてみてください。
いるじゃないですか、たまに見えない存在と会話している老人とか。たぶんアレは高次の存在から使命を受けているのですよ。
最後に窓際で息子といたのは誰?
これはもう見た目から普通に『ノーマの父親』ですが、なぜ彼がいたのか…となると、そこはもう憶測の範疇になるかと。
単純にノーマ宅で起きた事件を聞き、現場に駆けつけて孫に寄り添っていただけ…という解釈もできますし、彼も「ヤツら」の一員だった…というのも濃厚な気がします。
どうしてアーサーは宇宙飛行士の試験に不合格になったの?
心理テストに失敗…とか言われていましたが、仕事もせずに会社の設備を使ってカミさんの義足作るのに夢中になっているからです。
NASAの研究施設をなんだと思っているのですか、ぷんぷん。
ちなみに彼が働く『ラングレーリサーチセンター』は実在しており、1917年設立・NASA最古の研究施設らしいですよ。
原作は…
長いっ。ホントは「鼻血は?」とか「Vサインは?」とか「デイナは?」とか、もっと掘り下げたい部分があったのですが、あまりにも長くなるので『3つ+おふざけ』で終わりにしました。
さてさて、本作には原作となった小説があります。
表題となっている「運命のボタン」を含む13篇からなる短編集で、ヒュー・ジャックマン主演の『映画/リアル・スティール』の原作となる「四角い墓場」も収録されております。
小説のほうは映画とはかなり異なり、宇宙要素はほぼなし。「ボタンを押せば大金もらえるけど、知らない誰かが死ぬよ」の設定は同じですが、死ぬのはなんと…旦那さん(!)
知らない人じゃないの!?…となるところですが、結局のところ「あなたは本当の意味で旦那さんを「知っている」と言えますか?」ってな話だったと思います。映画でもちょろっと匂わせるくだりがありましたよね。
気になる方はどうぞ…と言いたいところですが、オチをバラしちゃったら意味ないだろって話ですな(笑)
超個人的な戯言感想
…というわけで。
こんなに長く書いておいて言うのもアレなのですが、
あんまりおもしろくなかった。
…です(笑)よくわからないけど面白かった、という作品はたまにありますが、本作はよくわからないし、あまり面白くもない。
言いたい事はわかるものの、表現が足りなすぎ。そして伝えたい事もなんとなく伝わるものの、変な方向に展開させすぎ。
『人生においての選択』をテーマにしたいのならば、こじんまりしても良いのでもう少しまとめたほうが良かったのでは…というのが個人的な感想。
これならばまだ『単なる心理ミステリー』でコンパクトな映画だったほうが楽しめた気もします。
しかしそのへんもドニー・ダーコに通じるものを感じますなぁ。あっちはそのワンダーっぷりが上手くハマり、こっちはスベった…ってトコでしょうか…。