【当ページには広告が含まれています】

なんじゃこの阿呆が考えたような邦題はっ!!…と言いたくなる、映画『ホワイトタイガー/ナチス極秘戦車・宿命の砲火』でネタバレを含む戯言感想を。

通常であれば絶対にチョイスしないであろう映画なのですが、友人が『オススメだから!ぜひ観て!』というので仕方なく鑑賞。しかし予想の斜め上を行く内容に、変な意味で「観て良かった」と思える1本でございました。

ホワイトタイガー
ナチス極秘戦車・宿命の砲火


2014年 ロシア

主なキャスト:
アレクセイ・ヴェルトコフ
ヴィタリー・キシュチェンコ
ヴァレリー・グリシュコ

監督:カレン・シャフナザーロフ
脚本:アレクサンドル・ポロジャンスキー、カレン・シャフナザーロフ

ネタバレ無しのあらすじ

破壊された戦車から瀕死の状態で発見された、とある戦車兵。

生きているのが不思議なほどの火傷を負っていたにもかかわらず、彼はみるみるうちに回復し再び戦車兵として復帰。

自分の名前も過去も覚えていない彼は、イワン・ナイジョノフという新たな名とともに宿敵『ホワイトタイガー』を追う…。

おお、なんて骨太な設定!しかも本物戦車を使用し、CGに頼らない迫力。…素晴らしい戦車映画じゃないかっ!

・・・と喜んだ戦車マニアを不可思議な設定で困惑させ、果てはホワイトタイガーそっちのけで『戦争の本質』という重いテーマへと突入した末に斜め上に脱出!

・・・という内容の、キテレツ戦車ファンタジー映画。

戦車好き垂涎

洋画における邦題の糞っぷりは今に始まったことではありませんが、本作もそれはもうヒドい。このタイトルを付けた人は『この映画をロクに見ていない』『見たけどよくわからなかった』、もしくは『なんか小難しいトコあるし、とりあえず戦車マニア狙いで売ってしまおう!』のどれかかと。

たしかに本物のt-34戦車を使用した映像は迫力満点。細部に渡ってリアルなこだわりも感じられ、CGを用いずにドッカンドッカン爆発させたうえに、小屋などのセットもそのまま戦車で叩き壊す!

カメラワークも「どうですか、戦車お好きでしょ?このアングルたまらんでしょ!?」という声が聞こえてきそうな、通好みなアングル連発。

「戦車長は不死身。戦車の声が聞こえ、戦車の神に導かれている」という困惑設定に加え、「ホワイトタイガーも神出鬼没。非リアルな亡霊戦車」という超謎設定、すなわち…

電波系戦車兵
  VS
心霊系戦車

…というファンタジーな展開に困惑しつつも、戦車が大好きならばその映像だけで十分に楽しめる内容と言えるでしょう。

終盤30分の置いてけぼり感

しかし不意にぶっこまれる「ドイツ軍無条件降伏の調印式」

少々変な設定はあれど、舐め回すようなアングルで戦車を愛でつつ、ドッカンドッカン&キュルキュルを楽しむ映画だったはずなのに…なぜか見せられているのはやたら長い尺の調印式陰鬱なお食事会

ワインで「白をくれ」と言ったのに赤を注がれていたり、フローズンベリーを初めて食べてみたり…

あの…ホワイトタイガーは…?

…とは言い出せないような重い雰囲気に、ただただオッサン達の暗い顔を見守るのみ。

まぁ戦争映画ですし、多少はこういったシーンも必要かも…と自分に言い聞かせ、これまた延々と長い尺で描かれる兵隊さんの隊列を見守った先に待っていたのは・・・お久しぶりのナイジョノフ少尉。おお、やっと会えた!

しかし彼は「戦争は終わっていない。ホワイトタイガーを焼き払うまでは」と意味深な事を言うのみで、もう操縦せず。

最後はヒトラーが謎の人物に、ちょっと危険な内容を孕んだ「この戦争の本質」について語り、終幕となるのでした。

・・・・・ホワイトタイガーは?

脳味噌スカスカ戦車映画ではない

…というわけで、最後まで見て初めてこの映画が『戦車のドッカンドッカンを楽しむ映画ではない』と気付かされるわけです(笑)

この肩透かし感を生み出している最大の要因はアホな邦題にあるのですが、加えて言えばあまりにも戦車戦がマニアックすぎるという点も。その温度差がスゴいんですもの。

原題はそのまま『White Tiger』で、ある種『小説・白鯨』に似た感覚もあり、決して薄っぺらい戦車映画ではないのに…ドコに焦点を当てたら良いのか困惑するような内容であり、

  • 『単なる戦車好き』=終盤つまらん
  • 『リアル系戦争映画好き』=なにこのファンタジー設定
  • 『戦車もファンタジーも屁理屈も好き』=イケる!

…という、非常に間口の狭い作品になっている感が否めず。

決してつまらない映画ではありませんし、戦車フェチ狙いで販売する路線は間違いではない気もするのですが…うーむ、やはり邦題をどうにかすればもう少し覚悟を持って鑑賞できたのでは…。

まぁ良い意味で「裏切られた感」を味わえる作品とも言えますけど。

感想とあとがき

なにはともあれ、私も鑑賞中に2~3回「…はい?」という気分になったものの、最終的には「悪くない映画だった」と思うことができたのでセーフ。

ナイジョノフが「戦車の神様が…」とか言い始めた時はどうしようかと思いましたけど(汗)

しかしこの映画を勧めてきた友人は、いったいドコに「すんげぇ面白い!」と思ったのでしょう…。

そして『見終わったら感想を教える』とは言ったものの、なんとも言えないこの気持ちをどう伝えれば良いのか…。とりあえずこの記事を読んでもらうのが一番手っ取り早いですな…。