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今回の1本は『映画/マン・ダウン 戦士の約束』。シャイア・ラブーフ主演の作品なのですが、戦争帰還兵のPTSD(心的外傷後ストレス障害)という重いテーマを扱っているうえに、さらに妻と親友の裏切りというこれまた重い出来事が加わり・・とにかくいつものノリでバカな戯言を書くのがためらわれるような内容になっています。

いつもニコニコ変態レビューが売りの「映画で戯言三昧」には厳しい作品です。しかし非常に良い映画でした。

マン・ダウン/戦士の約束
(原題:MAN DOWN)


2015年 アメリカ

主なキャスト:

シャイア・ラブーフ
ケイト・マーラ
ゲイリー・オールドマン
ジェイ・コートニー
クリフトン・コリンズ・Jr
チャーリー・ショットウェル

監督:ディート・モンティエル
脚本:アダム・G・サイモン、ディート・モンティエル

ネタバレ無しのあらすじ

米軍の海兵隊員ガブリエル・ドラマー(シャイア・ラブーフ)は、愛する息子ジョナサン(チャーリー・ショットウェル)と妻ナタリー(ケイト・マーラ)を故郷に残し、アフガニスタンへと出征する。

しかし現地での過酷な任務を終え帰還した彼の目に映ったのは…建物が崩壊し、住人も消えてしまった故郷の姿だった。

共に帰還した友人デヴィンと共に愛する家族を探すガブリエル。

果たして世界に何が起こったのだろうか・・・。

・・・といった内容の作品。

キャストで戯言

好きな俳優は数多くいますが、どうやら私が「最も好きな俳優」はシャイア・ラブーフのようです。最近気づきました。

よく「トランスフォーマーのシャイア・ラブーフ主演」などと書かれたりする彼ですが、私はトランスフォーマーシリーズは観ていないのでそっちのイメージは全くありません。ディスタービアで注目し、彼の最高の魅力を感じるのはイーグル・アイです。

しかしこの『映画/マン・ダウン』の彼も、過去最高と言って良いくらいに素晴らしい。あまりにも素晴らしすぎて、どうにかなっちゃいそうです。

奥さん役のケイト・マーラも人気のある女優ですが、個人的には妹のルーニー・マーラのほうが魅力を感じます。なんというか、美人だけどありきたりな女優だよね、お姉ちゃんのほうは。

その他、抜群の安定感があるゲイリー・オールドマンはもう言わずもがな。

ちょっとマニアックですが、クリフトン・コリンズ・Jrが出演しているのも嬉しかったです。

ちょっぴり複雑な展開

この映画は3つの時間軸と4つの世界をいったりきたりする形で展開し、それらの話がそれぞれ進みながら絡み合っていくので…人によっては「ん?んん??」となってしまいそうな作りになっています。

まずは最も長く進行していく『海兵隊員としてのガブリエル』の部分。

新隊員として訓練を受ける部分から、アフガニスタンへと旅立ち過酷な経験をし、そして再び故郷へと戻ってくる。

そのまま後の『帰還後のガブリエル』へとシームレスに繋がっていく部分になります。

そして『ペイトン大尉と対話する場面』

アフガニスタンでの任務中、ガブリエルの身に起こった出来事に対してカウンセリング的な会話を受けるシーンです。

ここでの二人の会話から、アフガニスタンでの従軍中にガブリエルの身に起こった出来事が語られていくことになります。

この映画で大事なシーンでもあり、最もインパクトのあるのが『荒廃した世界』

ガブリエルが妻と息子を探し求めて歩き回る世界です。非現実的な色彩や描写が用いられており、一見すると「なんだこの安っぽいCGは」と思ってしまいそうな情景なのですが・・・それにはしっかり意味があったのですね。

そして『帰還後のガブリエル』になります。

これは最初の『海兵隊員のガブリエル』から繋がる形で描かれ、なおかつ『荒廃した世界』と同一の時間軸になります。

物語終盤は「荒廃した世界」と「帰還後のガブリエル」が混じり合っていき、物語の真実が描かれる形になります。

ここからネタバレを含むよ!
この映画は特に「ネタバレを知ってから観てはダメな映画」なので注意!

意見の分かれる展開

この映画も評価が分かれる作品で、けっこうミソクソに言っている人も多いんですよね…。

主なポイントはやはり「ゴチャゴチャした表現」のようで、あっちを描いたり、こっちに戻ったり、わけわからんわっ!となる方も多いようです。

私は3回鑑賞しましたが・・・初見時はちょっとだけ「ん?」となりました。「わけがわからん」とまではいかないと思いますが、たしかにわかりやすーい展開とは言い難いです。

そして最後に明かされる真実も評価が大きく分かれるようです。

「はいはい、どうせこういうオチだと思ってたよ・・」とガッカリする方もいるようですし、「まさかこういう事だったとは!」と衝撃を受けた方も。

私はその中間…でしょうか。途中からオチは読めていましたが、それでも衝撃的でした。あまりにも悲しい現実に「やっぱりこうだったのか・・・」と胸が苦しくなります。

奥さんの不倫

ガブリエルの妻ナタリーに関しても、これまた荒れるポイントのようです。

「戦場に行ってる旦那を待つ奥さんの気持ちが、どんなにつらいかわからないの!?」という意見もあるでしょう。実際そういった感じで奥さんを擁護する意見も多数見受けられました。…しかし理由があったからといって不倫という行為が正当化される事はありません。どんなに屁理屈こねようとも、不貞は不貞です。

いちおう奥さん側としてもデヴィンとの関係を終わらせようとしている節はありましたし「私を罰したいならかまわない」とも言っていますが…やはりなんというか、開き直ってる感があるんですよね・・・。

この「奥さんの不倫」を入れてしまったせいで、肝心の「戦争ストレスによるPTSD」というテーマに余計なゴタゴタが混じってしまった気もしますが・・・彼女がもう少し誠意を持って、自分の犯した過ちに向き合ってくれていたならば、ガブリエルがあそこまで壊れてしまう事はなかったのではないかと思います。

自分が信じていた妻はもういない。

だからこそ、ガブリエルは「荒廃した世界」で妻の事がわからなかったのでしょう。あの世界で彼が探しているのは「愛し信じていた妻」なのです。

ナタリーに銃を突きつけて「妻は。ナタリーはどこだ」と迫る彼の姿は、それを如実に表していて切なくなりました。

救いのないラスト

物語の終わり際、ガブリエルは「目の前にいるのが妻と息子で、自分がおかしくなっていた」と気づきますが、時すでに遅し。

何発も撃たれ、おそらくこのまま死んでしまうのだろう…という終わり方になっています。

しかしもし、万が一彼がここで一命を取り留めたとしても・・・やはり救いはない気がします。

彼がすぐに正常に戻るとは思えませんし、もし戻ったとしてもあの奥さんとやり直すのは無理でしょう。中盤以降、ガブリエルに対する愛が全く感じられませんから。

そしてやはりあのまま亡くなってしまったとしたら…息子が不憫でなりません。

父親がおかしくなっている事に気づき、怖いと思いながらも、一生懸命信じようとした息子。ガブリエルからジョナサンへの愛情も感じますが、それ以上にジョナサンからガブリエルへの強い愛情が泣かせます。

素晴らしい映画でございました

・・・というわけで、ぜんぜんバカみたいな戯言を書ける映画ではありませんでした。

おっぱいもお尻も出てきませんし、変態もサイコさんも出てきません。

そこにあるのは痛いほどの「生々しい現実」です。

戦争はよくない!なんて言うのは簡単ですし、現代社会の構造を考えるとただの綺麗ごとにしかなりませんが・・・やはりこういう現実は悲しいものです。

辛口な意見も多い映画ですが、私としては絶賛に近い『映画/マン・ダウン』です。同じく戦争によるPTSDを描いた『映画/マイ・ブラザー』(トビー・マグワイア主演のリメイクのほう)も素晴らしい作品でしたよ。

しいて文句をつけるならば・・・

例のごとく余計なサブタイトルを付けるのはやめようよ!
なによ「戦士の約束」って・・・