ネタバレ『スナッチャーズ・フィーバー』有糸分裂?謎の弁当と見づらいPOV

どんな商品であれ「パッケージに騙された!」という事は多々ありますが…こと映画に関しては「予告編に騙された!」という事も。今回はそんな1本『映画/スナッチャーズ・フィーバー』で戯言。少々ネタバレを含むでご注意を。

とにかく不思議かつ不気味な予告編が予告編が非常に魅力的な本作ですが、本編を見てみるとちょっとアレな部分が目立ちすぎて…。

スナッチャーズ・フィーバー/喰われた町
(原題:There are Monsters)


2014年 カナダ

主なキャスト:

クリスティン・ランジール
ガイ・ジャーメイン
マシュー・エイミオット

監督:ジェイ・ダール
脚本:ジェイ・ダール

ネタバレ無しのあらすじ

大学の課題作品として、卒業生にインタビューをするための旅行に出たテリー、ベス、ダン、ジェフの4人。

3台のハンディビデオカメラで撮影しながら、いかにも大学生といったノリで旅を進める一同。しかし徐々に不穏な空気が流れ始める。

後ろを向いている人影、子供の弁当、豚のお面、とにかくこの町は何かがおかしい・・・。

・・・といった内容を、手振れとピンボケが酷すぎるPOV映像で見させられる作品。うっぷ、酔いそう。

POVはもう飽きた

この映画はいわゆるPOV映画。POVとは「Point of View Shot」の略で、日本語にすると「主観映像」だったり「視点映像」だったり、要するに「登場人物の視点で映像を展開する作品」の事。

映画では劇中の人物が携帯電話やビデオカメラなどで撮影している映像が多いですが、そういった記録媒体を使用せずとも、一人称視点で構成された映像は全てPOVと呼んで問題ありません。

ちなみに片手で撮影するコンパクトなビデオカメラの事を『ハンディカム』と呼称する人がよくいますが、ハンディカムはSONYの登録商標ですので、厳密にはSONY製品以外はハンディカムとは呼びません。

同じようにメーカー関係なくセロハンテープの事を『セロテープ(ニチバンの登録商標)』と呼んだり、食品ラップを『サランラップ(ダウ・ケミカルと旭化成の登録商標)』と呼んだり、そういう事ってありますな。

ちなみに『ウォシュレット』もTOTOの商品名ですので、厳密には他メーカー製品には当てはまりません。じゃあ『シャワートイレ』と呼べば良いんだね?と思った方は残念、それもINAXの登録商標です。

…と、そんな話はどうでも良いんです。POVの話に戻しましょ。

POV映画のヒット作の1つに『映画/REC』があり、私もそれでPOVというものを意識するように。(それ以前にもPOV形式の映画はありましたが、あまり意識していなかったので…)

最初に見た時はまるで本物ドキュメンタリーのようなリアル感が衝撃だったものです。

・・・が、誰かが当てるとすぐマネをするのが人間の悪いところ。あっちもこっちもPOVとモキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)作品が溢れはじめ、今じゃ猫も杓子もPOVだらけ。低予算ホラーに石を投げりゃ半分くらいはPOVに当たりますな。

もちろん、本当に上手にPOVを用いて素晴らしい臨場感を出している映画も数多くあるのですが、これまた駄作になると、ただただ見づらいだけ。

そして残念ながらこの映画は後者。

人の手での撮影によるリアルなブレ・ボケではなく、不自然で過剰すぎる画像の乱れ。さらには露骨に後処理で乗せたノイズまであり、臨場感はまるで無し。

物語中、誰も撮影していない場面では通常カメラの映像も挟まれますが、それはほんのちょっとだけ。ほぼほぼ全編が嘘臭くて見づらいPOVで構成されており、気分が悪くなるわ萎えてくるわ…。

挙句の果てに、終盤「ここは絶対に誰も撮影していないだろ?」という場面まで同様のハンディカメラ映像になっているという適当さも。

映像表現に関しては、控え目に言ってもクソです。


ここからネタバレを含むよ!

手抜きのブン投げ

結論から言ってしまえば、4人が遭遇する数々の「変な現象」の正体は作中で明確にされません。

銀行でオバちゃんが口から出した生レバーのような物体が本体のようにも感じますが、同じモノが子供の弁当にも入っていましたし・・・。アレが本体というわけでは無いのではないかと。

『有糸分裂』がどうとか言っていますが、残念ながらそれっぽい味付けに使われているだけで深く掘り下げるわけでもなし。

有糸分裂とは?

真核生物の細胞分裂における核分裂の様式の1つ。
細胞分裂の際にクロマチンが染色体を形成し、この染色体が紡錘体によって分配される分裂様式の事。

…などと言われても何がなにやらわかりませんな。大丈夫、私もわかりません。
もはや『映画とは全く関係ありません』といっても良いレベルです。

「『なにか』が人間になりすます」というのはわかるものの、その「なにか」が悪魔なのか怪物なのか宇宙人なのか…それも謎のまま。

原題が「There are Monsters」なので怪物なのか?とも思えますが、単に「なにか」をモンスターと形容しているだけかもしれませんし、そもそも「怪物」ってなによって話です。

『映画/アルカディア』でも書きましたが、こういう「映像のインパクト重視で制作し、細かい部分は全部謎でした、で済ませる映画」ってのは個人的には大っ嫌いなんですよね…。

もちろん、最終的に『謎』が残ったままになるのがイヤというわけではなく、上手に「謎」を残してくれる映画はむしろ好きなのです。鑑賞後にあれこれ楽しく考察できるような映画ならば、ぜーんぶブン投げて謎のまま終わらせられたとしてもOKですよ。

しかし若手の新人監督にありがちな「斬新なアイデアが浮かんだので、VFXを駆使してインパクトのある映像を作ろう!細かいとこは『謎』って事にしとけば、奥深い感じにもなるだろう!」と、浅はかな思考が透けて見える映画にはうんざり。それは奥深さでも味わいでもなく、ただの無責任ですな。

個人的な戯言感想

予告編にも入っていますが「後ろ向いていた人が一瞬でガラスにべたーん!!」だけは素晴らしいインパクト。もうこの映像だけでご飯三杯食えますな。

しかしそれ以外は全体的に「来るよ・・来るよ・・・はい、きたよ!」と予想がつくベタ展開で衝撃要素を入れてくるため、通して本編を見ていると意外に衝撃は少なめ。

中盤までは良い感じで「なにかがおかしい・・」という空気を作ってくれているのですが、後半は勢いだけで押している感じもします。

どうやらこの映画、監督のジェイ・ダールが自身の短編映画を長編リメイク化した作品らしく。

もとの短編映画は非常に高い評価を得たそうですが、それはやはり「短編」だったからこその良さだったんでしょうねぇ。予告編が秀逸なのもやはり短時間に凝縮されているからかと。

こんな「見づらい映像がだらだら続く映画」では、短くまとまっていたモノを無駄に引き伸ばしただけ…と言われても仕方ない。

個人的には『良い部分もあるが、それ以上に残念な部分が多すぎて面白いとは言い難い』といった感想になりました。うーむ、残念。

ついでに原題の「There are Monsters」もダサさ炸裂ですが、邦題もちょっとどうかと思いますなぁ…。